狭い歩道でドラクエ状態
僕は、駅までの道のりを急いでいた。
事務所でギリギリまで作業を追い込んだ結果、予定していた打合せ時間まで余裕がない。
こんな事ならもっと前からしっかりと詰めとけば良かった。といつも思う。
こだわりの問題なのか、自分のスケジューリングの問題なのか。
寝食の時間を削ってでもやったろうではないかというある種のドーピング理論も頭をもたげるが、
人間はそもそも食って寝てをしないわけにはいかない。
そんな事をぐるぐる考えて下を向いて歩いていたら、
目の前に、明らかに僕より緩やかな足取りで前を歩く女性の姿が見えた。
よく見ると、さらにその前には今風のピタッとしたスーツを着こなした男性。
さらにその前には、綺麗なラクダ色のカーディガンを羽織ったおじいちゃんの姿が見える。
皆が歩く歩道は、片側に店舗、もう片側は駅前特有の車通りが多い道路になっている。
そしてこの歩道が明らかに狭い。
しまった。
そう思った時には遅かった。
その瞬間、そこには一列縦隊のドラクエのパーティーが編成されていた。
この構図でいくと、勇者おじいちゃん、戦士サラリーマン、僧侶女性ではないか。
そこに加わる僕。
このポジションだと良くて魔法使い、ただ自分の身なりを考えると、ともすれば遊び人の位置だ。
パーティー全員の素早さをUPさせるピオリムを唱えられたらどんなに良かったか。
やはり僕は遊び人なのか。
‥いや待て。遊び人は賢者になれる。
でもいったいいつになったら賢者になれるのか?
‥そもそもダーマ神殿ってどこにある?
目の前の信号が赤になる。
青になったタイミングで、パーティー全員が一斉に勇者を追い越していった。
振り返ると、勇者はただ前を見て真っ直ぐに歩を進めている。
後ろを顧みず、マイペースで愚直なまでに真っ直ぐに。
近い将来、そんな勇者に僕もなれるだろうか。
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