すごいイルミネーションの家が目印

「住宅街には、必ずどこかにすごいイルミネーションの家がある説」

水ダウに取り上げられる価値もないこの説を僕は信じている。
今住んでいるところは言うまでもないが、
幼少期に住んでいた埼玉北東部の田舎においても例外ではなかった。
同級生のKちゃんの家には庭に大きなシンボルツリーが立っていて、
12月になると、その木に張り巡らされたイルミネーションが一斉に点灯されていた。
Kちゃんの家は田んぼの真ん中にあったので、その光は
夜になるとまるで陸に立つ灯台のようにあたりを幻想的に照らしていた。

見るだけで心が躍るその光景に、心の底で「羨ましいな」と感じつつも、
幼いながら「ウチでは無理だな」と思っていた。
ウチにはサンタが来たことはなかったし、Kちゃん家はお金持ちだった。

家路を急ぐ途中、街中のイルミネーションを眺めながらしんみりとそんなことを考えていた。

今、有難いことにウチにはちゃんとサンタが来る。
だけどシンボルツリーのイルミネーションはない。集合住宅だし。

今年になって思ったことがある。

「電気代上がってもKちゃん家は今年もイルミネーションをつけるのか?」

そんな現実的なことしか考えられない僕の元には、今年もサンタはきっと来ないんだろう。
ふと、スマホを見ると「今どこらへん?」と奥さんからのLINEが入っている。

「すごいイルミネーションの家の前らへん」

なるほど。
すごいイルミネーションの家って、陸の灯台もとい地図に載っていない目印になっている。
昔も今も少なくとも僕には。

一年を通してサンタクロースが明るく手を振るこのすごいイルミネーションの家には、
今年も色とりどりの光が灯っていた。

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