グーだけで勝つ
子どもの頃から変わらず続けているものの一つに「じゃんけん」がある。
野球よりもサッカーよりも、日本中の誰もがルールを知っているゲーム。じゃんけん。
ドラえもんもサザエさんも毎週勝負を挑んでくるゲーム。じゃんけん。
知らないのは、もう本当に赤ちゃんだけと言えるだろう。
姿形は違えど、世界中でも語り継がれる恐るべきゲームである。
勝ち負けを決めたい時。
順番を決める時。
漢気を見せる時。
筋肉痛も2日後に訪れ、かかとの乾燥も気になり始めた中年男性の世界においても、
じゃんけんの火は未だに消えることはない。
グーを出すか、チョキを出すか、パーを出すか。
この永遠とも言える3択の攻防戦に、僕はごくたまに一石を投じたくなる時がある。
「グーだけで勝てるのではないか」
人数が多くなればなるほど、そのスリルは増す。
もちろん「オレ、グーしか出さないから」などという野暮なことは言わない。
罷り間違ってもこれは勝負事だ。そんなことをしたら相手に対しても失礼なことはわかっている。
だから当然、その場にいる人はそんなこと僕が考えているなんて知りもしない。
そして、驚くことに、ごくたまに本当にグーだけで勝っちゃうことがある。
そんな時、僕は心の中で「これって、すごい確率なんじゃないかしら」と当然のように思う。
でも声に出して「オレ、グーだけで勝っちゃったもんね!」とは絶対言わない。
仮に100人と対決してグーだけで勝ったとしても自分からは言わないだろう。
だって、意味ないんだもん。
確かに奇跡的な確率っていうことで盛り上がることはあるかもしれない。
でも、ただでさえじゃんけん(=勝負)に勝っているのである。
そこからさらに勝ちをひけらかすような話だし、聞いた所で周りは「え?なんで?」と思うだけである。
この、自分の中だけで完結するストーリーが、ごくたまにたまらなく愛おしい時がある。
「ストレス解消法はなんですか?」と聞かれたら「グーだけでじゃんけんに勝つことです。」と答えるかもしれない。
(注:別にグーにこだわっているわけではないです。チョキでもパーでも良いです。)
でも万が一、僕ではない誰かが「え?いまグーだけで勝ったよね?」と気づいてくれたら
それはそれですごく嬉しいかもしれない。
人が気付くか気付かないかわからない仕掛け。
それってなんか映像作りにも似てるなーと思った。
昨晩、娘と「すみっこぐらしすごろく」をやった。
ルーレットを回す順番を決めようとじゃんけんをした。
僕はチョキを出して負けた。
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