靴だけ汚い

数年前、幼馴染に誘われて東京ドームにライオンズ戦を見に行ったことがある。
お互い東京で就職をして、10年くらい経っていた頃だと思う。
久々に会う懐かしさと、きちんと社会人やってます的な自己顕示欲とも言える変な自信が相まって、
そこまで熱狂的な西武ファンでもなかったのに、ワクワクした気持ちで行ったのを覚えている。

ただ僕は仕事柄スーツを普段から着ていない。
ジャケットすらロクなものを持っていない。
高級時計も唯一持っていたのは、婚約指輪のお返しに妻からプレゼントしてもらったスピードマスターのみ。
はっきり言って、立派な社会人のアイコンとも言えるアイテムを持っていなかった。
なので、その当時一番高いコートとニットと綺麗めなユニクロのパンツを履いて、
僕なりにビシッとキメて行くことにした。
当日はあいにくの雨。
あまり考えもなしに、濡れても良いグレーのニューバランスを履いて家を出た。
全身のカラーコーデは問題ないはずだ。

いざ幼馴染と対面し、お互いの近況を笑顔で語り合うはずだった。
しかし、幼馴染のファーストタッチの発言で僕は耳を疑った。

「靴、汚ねぇな。」

雨だからという理由だけであまり考えもせず履いてきたスタイリッシュグレーのNBは
濡れ鼠のようにしょぼくれている。明らかに履き潰されていた。

オシャレは足元から。

そういうことか。
僕は「足元をすくわれた」のだ。

週の始まり。
僕は洗い立てのグレーのニューバランスを履いて今日も家を出る。

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